top of page

路地裏の風景

  • 2月19日
  • 読了時間: 2分

大阪の空堀商店街のほど近く、ひっそりと佇む一軒の長屋があります。

細い路地に面して肩を寄せ合うように建つ木造の家々。かつて大阪の下町には当たり前のようにあった風景ですが、

近年はマンション開発や道路拡幅、防災上の課題などを背景に、こうした路地のある街並みは少しずつ姿を消しているように思います。


けれど、この空気感には不思議な懐かしさがあります。

同じく大阪の下町で育ったボクにとっては、どこか見慣れた景色であり、幼い頃の記憶をふと呼び起こすような、そんなノスタルジアを感じる場所です。



今回、この長屋の一画をリノベーションします。お施主さんのご実家です。


子どもの頃、毎日の暮らしを過ごした家。

結婚後には、ご自身のお子さんとともに暮らした時期もありました。そして阪神大震災の記憶。

長い年月のなかで積み重なった、家族の時間。ただ古い建物なのではなく、「思い出そのもの」がこの場所には残っています。


こうした長屋は、実は簡単に建て替えることができません。お隣と構造的につながっているという問題もありますが、それ以前に、前面道路の幅員が不足しているため、現在の法規では確認申請そのものが難しいケースがほとんどです。


だから「リノベーションして住み継ぐしかない」そう思っていたのですが、周囲を見渡して驚きました。


二軒に一軒ほどの勢いで民泊へと姿を変えていたのです。これまでならなかなか売れないはずが、不動産会社が買い取ったのでしょう。海外からの旅行者が大きなキャリーケースを引きながら路地を歩く光景は、少し前のこの街では想像もできなかったかもしれません。


インバウンド景気、地域経済の活性化、そんなふうに見ると「民泊にして何が悪い」と言われそうですが、この昭和感あふれる、以前のコミュニティの佇まいが残るこの場所に、何の縁もゆかりもない人が、ほんの短期間で入れ代わり立ち代わり出入りするというのは、なんだか異様な感じです。







それでも、この長屋の中には、今なお昔の暮らしの気配が静かに残っていました。

一階は、台所と六畳ひと間、そして小さな洗面所。決して広くはありません。

けれど、その限られた空間の中で、家族が肩を寄せ合い、笑い声が響き、食卓を囲んでいたであろう風景が自然と浮かんできます。

つつましく、温かく、にぎやかな暮らし。

この家には、そんな目に見えぬ時間の痕跡が、今でも感じられます。

 
 

最新記事

すべて表示
古い建物の、それ違法建築?既存不適格?

自分の家はもしかして違法建築?、もしくは、違法かどうかまではわからないけれど、ちゃんと書類や図面があるかどうかわからない、古い建物、特に木造戸建てにお住まいでそのように思われている方、いらっしゃると思います。 今の法律(建築基準法、都市計画法など)に合っていない建物は世の中にたくさん存在します。そうなっている原因は次の2つです。 ・違法建築 ・既存不適格 違法建築はまさに法律違反をした建物のことで

 
 
bottom of page