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建物を傷つけないリノベーション

7月29日
読了時間: 4分

更新日:8月18日

物置と化してしまっているミーティングスペースを、

社内デザイナーたちのインスピレーションを刺激するような場所にしたい。


これが島津製作所さんからはじめにお聞きした話でした。



施工前のスペースの様子
施工前のスペースの様子

たしかに、打ち合わせをすることはできそうです。ただ、試作品なのか部品なのか、用途のよくわからないものがあちこちに置かれ、その合間にテーブルが置かれている。そんな状態でした。


今回のプロジェクトは、デザイン室からの依頼です。

使いたい素材や設備、つくりたい雰囲気、展示スペースの使い方から細かなディテールまで、社員の皆さんからもさまざまなアイデアが出てきます。

島津のスタッフの方が描いた什器のディテールを見せてもらったり、イメージCGを眺めながら、実際のサンプルを手に取って近いものを吟味したり。

打ち合わせというより、いつの間にか「提案する側・される側」という関係を越えて、同業者同士でアイデアをぶつけ合うような時間になっていきました。


島津のスタッフさんが描いた什器のディテールのイメージ
島津のスタッフさんが描いた什器のディテールのイメージ
イメージCGを見ながら実際のサンプルで近いものを吟味
イメージCGを見ながら実際のサンプルで近いものを吟味

窓際のベンチ。

中央には、開かれたミーティングスペース。

商品展示にもホワイトボードにも使える間仕切りパネル。

映像作品を映し出す大画面モニター。

デザイナーが気軽に立ち寄り、立ったままでもブレストできるビッグテーブル。


さまざまな機能をひとつの空間に組み込みながら、もうひとつ、最初から大前提としていたことがありました。


建物を傷つけないこと。

この建物は、まだ新築してそれほど年月が経っていません。内外装ともに、ほぼ新築に近い状態です。

既存の間仕切りはシステム家具で構成されているため、解体そのものは問題ありませんでした。

ところが、天井を見上げると、照明や空調システムが組み込まれた独自仕様のパネルが使われています。



なんとなく触るとややこしそうな天井
なんとなく触るとややこしそうな天井

新しい空間をつくりたい。でも、既存の建物にはできるだけ手を入れたくない。

この相反する条件を解決するために提案したのが、「トリカゴ」方式でした。

スペース全体をスチール製の格子で構成し、その一部を床や壁、天井の下地がある箇所に束のように伸ばして支持する。建物そのものに大きく手を加えるのではなく、既存空間の中に、もうひとつの構造体をつくる。

そうして、空間全体をひとつの大きな什器のように仕立てていきました。




全体で自立しているような空間
全体で自立しているような空間

造作については、「できる限りノイズのないものに」というご要望がありました。

そこで格子のフレームは、強度をぎりぎり確保できる40mm角に。ビッグテーブルとなる展示台は、輪郭が際立つようにエッジを立てたデザインとしました。天板にはコーリアンを使い、モルタル風の丸テーブルも、継ぎ目を感じさせない一体感のある仕上がりにしています。


そして、ここで欠かせなかったのが、宝島造形さんのエイジング技術です。

製作途中の工場では、一つひとつのパーツに丁寧に塗装と加飾が施されていきました。

まるで石を削り出したようなパネル。

モルタルを塗り重ねたような表情。

人工的につくられたものなのに、どこか時間を経た素材のような、豊かな質感があります。この勢いに乗って、ワークスペースとの仕切り壁には、フェイクではありますが、緑化壁面も加えました。



塗装サンプルづくり
塗装サンプルづくり
機能パネルのアングルおさまり確認
機能パネルのアングルおさまり確認
塗装を仕上げていく
塗装を仕上げていく

電気工事も、少し特殊なものでした。

空間の各所にスイッチやコンセントを設ける必要がありましたが、あらかじめ配線ルートを入念に検討し、40mm角のフレームの中を電線が通るように計画。構造体そのものが、空間をつくるだけでなく、設備を納める役割も担っています。

そして最後の仕上げとして、この場所に「DESIGN JAM」という名前を与えました。

その文字をLEDネオンサインで壁面に浮かび上がらせる。デザイナーたちが集まり、アイデアをぶつけ合い、何か新しいものが生まれる場所。そんな空間の性格を、そのまま名前にしました。



ミーティングスペースの下地仕込み
ミーティングスペースの下地仕込み
LEDモニターの配線を什器へ渡す準備
LEDモニターの配線を什器へ渡す準備

打ち合わせを重ねること約半年。

工事は、お盆休みの10日間ですべてを完了させました。

当初の狙いどおり、造形そのものにはできるだけノイズを残さず、その一方で、素材やテクスチャには豊かな表情を持たせる。そのメリハリが効いた、刺激的な空間ができあがりました。


完全に壁で仕切らなくても、それぞれの場所にはきちんと居場所がある。人が集まり、考え、話し、展示し、ときには一人で集中する。

ひとつの大きな空間の中に、いくつもの使い方が共存する場所です。

そして何より、ここからまた新しいアイデアが生まれていく。

そんな「DESIGN JAM」になったのではないかと思います。















photo Taeka Nagai














 
 
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